優しい雨と、雲間の太陽。

昨日は医者から夫の手術の説明を聞くために病院へ行った。夫は久しぶりの面会を待ちわびていたようで、とても喜んでいた。
指定時間は午後3時半だったが、医師が来たのは5時頃だ。手術が長引いたため、遅れたようだ。
脱臼一箇所、骨折三箇所。レントゲン写真は衝撃的でとても見られたものではなかった。

「今回の手術は、難易度も高く、痛いですが….しないよりする方がメリットがあります」
左鎖骨と肩甲骨にワイヤーやボルト、パテなどが入り、夫の肩周りは金属だらけになってしまう。手術時間は推定5時間。術後の痛みや合併症、考えられる後遺症の説明を聞いていると私の体もギュッと強張っていく。
神経ブロック(恐らく神経外科のこと)と連携し、痛みや後遺症が残らないよう全力を尽くすという。

「手術、怖いなあ」夫がボソッと、呟いた。いつものように淡々とした口調だけど、初めての手術がどれだけ怖いかよくわかる。

私の手術経験は2回(出産含めると3回)だが、指定時間に始まらず、待ち時間には緊張で血圧が上がったものだ。実際の手術は、麻酔が効いている間に終わってしまうので、何が行われたかは覚えていない。ただ手術直後に痛みが出て、看護師に痛み止めをもらった記憶がある。

聖路加国際病院は国内有数の大病院で、多くの人が行き交う1階ロビーには、スターバックスコーヒーや、画廊、売店などがある。院内の随所に絵画が飾られ、患者や遺族の不安が和らぐよう、工夫がされていた。
この病院には専門医が多く在籍しており、最先端医療で難病患者の治療にあたっている。だから安心、といえば、安心なのだが、医者の説明からも、夫の怪我がどれだけ重傷なのかが伝わってきた。

今はコロナ対策のため、面会の人数も回数も限られている。一人で痛みに耐えている夫は心細いだろう。夕飯が終わるまで病室にいて、夜7時ごろ、病棟を出た。

事故が起きてから、病院や保険会社、夫の会社、弁護士、警察など、各方面への対応に追われていた。ちょうどデザインの仕事と、娘の進学手続きも重なり、夫の体調だけを気遣っていられる状態ではなかった。気が張っていたからか、自分の疲労がどれだけのものかわからなかった。
布団に寝転がると、床に体を吸い取られるようによく眠った。



夢に、5年前に他界したウサギ、ポロンが出てきた。
ゲージの中にちょこんと座った彼女は、黒々とした大きな目で私を見ていた。ゲージには扉がなかった。ポロンの毛並みは、驚く程艶があった。
勢いよくゲージから走り出したポロンは、元気よく跳ね回り、柵をぴょんっと飛び越え、私の腕の中に入り込んだ。生前は、積極的に抱っこされに来るほど人懐こい性格ではなかったので、びっくりした。
医師のような白衣を着た若い女性がそばにいた。「気をつけていないと、柵を飛超えてしまうんですよ」と彼女はいう。



目が覚めたのは正午前だ。
朝7時頃一度起きて、娘を学校へ送り出した後、再び寝た。
部屋の中は薄暗い。私は窓を開けてベランダへ出た。灰色の雲から降り注ぐ細かい雨が、街を潤していた。
さらさらという雨音が体に染み込んでいく。雨は優しい。どんな時も、私の疲れを洗い流してくれる。
遠くへ視線をやると、雲の切れ間から太陽の光が溢れていた。

なんだか気分が良くなって、私は洗濯物を干す準備を始めた。





About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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