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大手術を受ける夫と、ホスピスへ行く父。

夫の手術は11日の予定だったが、10日に夫が呼吸困難に陥りICUに入ったため、中止となった。
「足に溜まった血栓が肺に入ると肺のポンプが機能しなくなり死に至ることがあります。これが一番怖いので、しっかり対応させていただきます」
以前に女医からそんな説明をしてされていたが、本当に起きるとは思わなかった。電話口で私は怖くなり、「夫は助かるのでしょうか」と聞いた。「絶対とは言えませんが、多分大丈夫です」と女医は返答した。

気が動転した。「死」が、頭をよぎる。今までの日常の崩壊と、これから迫りくる困難が、巨大な暗雲となって私にのしかかる。もし家に娘がいなかったら、私が一人だったら、この暗雲をうけとめられただろうか。

今後の治療ついて話があると言われ、娘を連れて病院へ向かった。病棟の待合室で、ICUから運ばれてくる夫と看護師に会った。早期対応だったため一命を取り止めたが、血をサラサラにする薬を大量に投与された夫は、かなりやつれていた。

「今度手術が延期になったら、肩の復元が難しくなるからさ。体調をコントロールしないと」
病院のベッドで辛そうに言う夫は、現世に未練を残すために、小さなキーボードを買ったという。
血流の回復を待つことになり、手術は17日に延期となった。

一つの疾患で予期しないトラブルが引き起こされ、命の危険にさらされる。私はずっと緊張していて、何か知らせが入ると下痢をした。
ちょうど横浜の実家も、父のパーキンソン病が進行し、誤嚥性肺炎の治療とリハビリが困難なため、ホスピスへ転院する話が上がっていた。弟が母と共に手続きを進めている。もう命が長くない父を前にして、悲しみと不安で押し潰されそうな母から電話が入るたび、気をしっかり保つよう励ました。

家族の「死」をこれほど身近に感じたことはなかった。何気なく送ってきた日常をこれほどまでに尊いと思ったことはなかった。一緒にいるものに甘えたり頼ったり、不平不満を言って喧嘩したりできることが、どれだけ平和で幸せなことかを実感する。
戻らない日々への愛しさと未来への決意が、私の腹に力を入れる。この大地に、芯を持って生きねばと思う。なぜなら死にゆくものに、生きることを託されているからだ。誰も、いつかは体が朽ち、愛するものとの別れが来る。その時の私にあるのは、恐れだろうか。後悔だろうか。安らぎだろうか。生き抜いた達成感だろうか。

17日、6時間にも及ぶ夫の手術は成功した。病室に戻ってきた夫は硬く目を閉じ、白い塊のように眠っていた。私の体も緊張の糸がほどけた。
「手術までに色々あったので、私も心配していたのですが、無事手術できて良かったと思います」
女医の声はいつも明るい。患者や家族を心配させないように配慮してくださっている事をありがたく思う。あとは回復を待つだけだ。夫の会社、夫の実家に連絡すると、皆、ほっとしたように胸を撫で下ろしていた。
命があることはありがたいことだ。この命を大切に、そして一緒に生きている人も大切に、1日1日を丁寧に生きていこうと思う。

About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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言葉とアートで人生をブレイクスルーする フリーランス画家 佐藤智美

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