作品や芸術活動、日常生活の中で感じたり考えたことを綴っています。色々な気づきを得て人生を豊かにしたいと思っています。

大いなる「母性」を、目の前にして。

平塚市美術館で開催されている「遠藤彰子展」を見に行った。
遠藤先生の個展にお邪魔するのは、これで3回目だ。電車で約2時間。東京駅から平塚駅までのJRの車窓には、青空の下で民家の屋根が波のように続く。美術大学に通った学生時代を思い出す。守られていた日々には、平和と窮屈が常に同居していた。

緑の多い長閑な住宅地の中にある平塚市美術館は、高い天井と明るい大理石の壁に光が溢れる、開放的な空間だった。
500号から1500号の大画面が並んだ展示室に入ると、津波に襲われたような感覚になる。絵の中で、個人の物語が寄せ集まり、連なり、社会の物語が嵐のように巻き起こる。四方八方から様々な感情を浴びせられているようで、体の内側がざらついていく。この緊張感はなんだろう。少し考えて、インターネットで頻繁に巻き起こる炎上や世論の動きと重なった。私は意を決して、これらと向き合った。

遠藤彰子 「鐘」 2007-8年 248.5 ×333.3cm。大画面の中に絡み合い連なる人々と、混在する動物。人間も動物も同じ魂と持つものとして、この世界に同居する。川、森、広場で人々は踊り、抱き合い、寛ぐ。所々に溢れかえる食物。楽しげに集う人々の中で立ち上る炎。枯れた樹林の向こうに、微かに見える光。ひたすら燃焼される豊さの行く末を案じながらも、人々は懸命に「今」を全うする。

そこに描かれているのは、清濁合わせのむ生命力の凄まじさだ。生きることで引き起こされる、あらゆる幸不幸、喜怒哀楽をも包括する壮大な物語には、私たちが求めてやまない、大いなる「母性」を感じずにいられない。


遠藤彰子「鐘」2007-8年 248.5 ×333.3cm



物語る 遠藤彰子展 
2021.10.2(土)ー12.12(日) 平塚市美術館
開館時間:9:30-17:00 (入場は16:30まで) 休館日・月曜日




TOMOMI SATO
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