ワイエスの描いた生活感。

美大受験予備校の課題でよく静物画を描いていたが、「魅力のある絵ではない」と先生に批評され、「魅力のある絵」ってなんなのか、手がかりを探していた。
自分にとって何が魅力なのかは、ある程度作品を創っていないと分からない。今思えば、予備校の先生も芸術家目線で、17歳の少女に無理難題を突きつけていたなあと思うのだけど、当時の私は、受験の重圧の中で埋もれた感性を引き出そうと必死だった。そんなとき出会ったのが、アメリカの写実画家、アンドリュー・ワイエスだった。
授業でよく取り上げられている表現主義の作品とは程遠かったが、緻密に描かれた写実絵画は、私の感性に馴染みやすかった。

当時、私はワイエスの何に惹かれていたのだろう。高校生の頃感じていたことと、今感じていることはあまり差がないように思う。
アメリカの農家の一風景だが、簡素な室内を照らす乾いた光は、幼い頃、私の肌が体感していた。侘しさをそっと温めるような太陽の光。秋から冬に移っていく時、もしくは冬から春に変わっていく時、凍ついた世界に恐る恐る近づいていく生命力の心細さと優しさが懐かしい。シンプルに描かれた自然の光と影が、アメリカの農村の慎ましい生活感を際立たせている。

アンドリュー・ワイエス『アルヴァロとクリスティーナ』(1968年)


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