小学5年の時、初めて映画館で見た映画が「地球へ…」だ。
予告CMでは貝殻型の宇宙船と銀髪の美青年が印象的だった。青年の名は、新人類ミュウの長、ソルジャー・ブルー。この青年に恋した私は、父に頼んで映画館へ連れていってもらった。
ミュウは超能力を持った新人類だ。人々の教育も生活もコンピューターに完全管理された社会で、ミュウは体制を乱すことで旧人類から危険視されていた。この物語は、迫害を逃れて地底に潜んでいたミュウたちが、居場所を求めて地球へいくまでの旅を描いている。80年代に放映された映画だが、当時の日本が歩んだ高度経済成長期の戦いと葛藤をそのまま表していると思った。
SFファンタジーで戦闘シーンも多いが、物語全体が優しい空気で貫かれていた。主人公で、ソルジャー・ブルー亡き後にミュウの長になるジョミーのわんぱくぶりと優しさ、旧人類側のエリート、キース・アニアンの悲しい冷酷さが美しい。キースは管理体制に服従するように訓練されたアンドロイドだが、敵側のジョミーの影響を受け、本来の帰るべき場所を見つけていく。
映画を観終わった後は、愛しいような悲しいような、甘酸っぱい気持ちだった。「人間の美しさと脆さは表裏一体なのだ」ということが、当時思春期の入口にいた私の胸に深く染み込んだ。
その後、父と弟と私は名古屋城へ行き(名古屋に住んでいたので)、赤い絨毯の上で抹茶とお団子を食べた。その時の抹茶の苦さと陽だまりの暖かさを今も覚えている。
あまりヒットしなかったみたいだが、時代の変化に消されてしまいがちなものが丁寧に描かれた傑作だと今も思っている。忘れないようにとAmazonでDVDを買って本棚に置いてある。
大人になってから観てみると、子供の頃には見えなかった物語の壮大さに気づく。「帰るべき場所」を求めるミュウたちの夢は、ソルジャー・ブルーから、ジョミー、その息子トォニィの3世代に渡って引き継がれた。いくつもの悲劇を乗り越えて達成していく様に、私は先人たちとの繋がりを重ねる。文明が進化する中で人々が願ってきたことは、意外と単純なものかもしれない。単純なものほど、手が届き難いのだ。
「地球へ」はその後もリメイクされ「帰るべき場所」から「人や仲間とのつながり」にフォーカスされた現代版として、何度か放映されたようだが、初期の「地球へ」に馴染みがあるのは、この映画が描かれた80年代の奮闘を知っているからだろうか。いろいろあったが、良い青春時代を送ったなと、懐かしい気持ちになる。
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