INDEPENDENT TOKYO 2025参加者対象のセミナーに行った。第一回目は主催ギャラリーの社長がアーティストの心構えについて語ってくださった。
アーティストも企業家精神を持たなくてはならないこと。SNS時代に大勢のアーティストとの競争関係にあること。常に人からどう見られるかを気遣い、自己プロディユースを心がけること。事業計画を立て、目標を立て、そこまでいくにはどうしたら良いか考えること…。
従来のように、好きなように作品を作っていても日の目を見るとは限らない。社会との橋渡しができていないと、永続的に生計を立てていくのはむずかしい。つまり自分の表現したいものを社会に伝えるのはどうしたら良いかを常に考えることが必要だと解釈した。
固定客ができない時代。一度買ってくれた人が次も買ってくれるとは限らない。だから発信し続け、出会い続ける。
そういえば、以前もSNSでそのようなことを他の誰かもつぶやいていたな。最近出会ったアート関係者の何人かはこの考え方を共有していた。
誰かの発した言葉は、また誰かに刺さり、またどこかに飛んで広がり、一つのムーブメントをつくり出している。
タイムラインにはプロアマ問わず色々なアーティストの呟きが流れてくる。自身の作品が売れたという自慢話、作り続ける苦しみと焦り。自らのステイとメントを誇示する人もいるが、変わりやすい時代を生きる不安の裏返しかもしれない。
SNSで注目を集めている作品は、コンセプトがハッキリしていて、わかりやすい。しかし、実物がよくないケースもあるし、永続的に売れ続けるとは限らない。目立つから飛びつくよう人は、他に目立つものがあれば、目移りするだろう。そのような相手に商売を続けるとしたら、作家はいかに内容のある作品を作るかよりも、いかに目立ち続けるかを考えなくてはいけない。
私はそんなに発信を頑張ってはいない。作品も毎日どころか数週間に1回程度しか投稿していないので、Instagramなどのビジュアル系メディアはあまり育たない(ポートフォリオとして割り切っている)。どちらかというと情報系メディアの方が得意で、Threadsでは、美術のことに限らず、ちょっと良い言葉を思いついたら投稿している。ブログや作品サイトと連携しているFacebookのフォロワーは結構いて、タイムラインでの宣伝を経路として作品を買ってくださるお客様はリピーターであることが多い。このご時世、本当にありがたいことだ。
セミナー後のポートフォリオービューは、なんとなく引っかかるものがあって、一旦諦めた。純粋に自分の絵の方向性がこれでいいのかを聞いてみたかったが、もしダメだと言われても、どうすることもできない。
じゃあどうするかって、自分の作品で勝負するしかない。やるべきことは、作品を通して伝えたいことを、お客にプレゼンすることだ。ただ描いて作って展示するのではなく、どのようなメッセージを込めたのかを説明し、顧客にとって一番受け取りやすい商品にしなくてはならない。
正直、デザインワークとあんまり変わらなくなってきたなあと思う。今流行っていることではなくていいですよ、自分のやりたいことをやってもいいですよ、というのは言葉の綾だ。外界とリンクしないからオリジナリティと言えるのだけど、自分のオリジナルの世界のどこから橋をかけるか、それは外側の世界を知らないと見つからない。
自分の世界にこもって制作ばかりいないで、作品を作らない人の世界も知らないとなと思ってしまうのは、私がグラフィックデザイナーだからだろう。
YouTubeを開いてみたら、Bump of Chickenが新曲を歌っていた。デビュー当時から今まで、もう25年くらいだろうか。メディアやファンに色々言われながら、スタイルを変えてきたバンド。販売戦略はあったと思うけど、流行に乗っては消えていくバンドもある中、一貫してピュアな心を歌い続けているのがすごい。
アート→SNS→バズり→販売 の公式は現代のアベレージだと思う。
自分はそれとは違うやり方でやりたいな、とは漠然と思っていて、アベレージから抜け出す地図を考えるけども、実際自分の作品が人と接触して何か起こってみると、地図なんてものは全く役に立たなくなるかもな、とちょっと思った。
アートはコミュニケーションだから。少なくとも私はそう思っている。同じ主張を持ったもの同士が共感しあって礎を築き、違う主張を持った者同士がぶつかり合って新しいものを創造する。何が起きるか、どこへ連れていかれるかわからない。だからエキサイティングなのだ。
100年後も作品が残るかって、そんなことは誰にもわからない。ただ、今の時代、誰もが誰かと繋がりたいから創作をしているように思う。感性を研ぎませて、丁寧にラッピングして、必要な誰かにお届けする。真心の交換ツールだ。
リアルな繋がりに飢えている現代だからこそ、アートがその役目を担うのだろう。
絵画:フランソワ・ブーシェ 「絵画の寓意」 (1765)
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