墓参りに行った。
前日いやなことがあって、それを忘れたいと思っていたら、父のことが浮かんだ。
横浜の南にあるその墓地は、広々とした敷地内にぽっかりと青い空が浮かんでいた。
事務所で仏花を買った私は、区画に沿った道をとぼとぼ歩いた。人影はほとんど見えなかった。しかし太陽の光は柔らかく降ってきて、一歩一歩踏みしめるたび、体が暖かく満たされていくようだった。
墓には大きな白い菊が添えてあった。少し枯れかけていたから、2〜3週間前に誰かが来たのだろう。私は墓周りを掃除して持ってきた仏花を一緒に添え、手を合わせた。
本当はここでいろいろなことを父に話しかけたかったが、墓石の前に座っていると、風が私の体の中を何度もすり抜けて、自分が透明になっていくようだった。私は言葉も忘れたまま、青空と周辺の木々を仰いでいた。見事に美しい鶯の声が何度もリフレインした。クロアゲハが木々の中を戯れて、一羽がこちらに飛んできた。アゲハは先祖の化身だという。父が来たのだろうか。
大きなクマンバチが飛んできたので、私は腰を上げ、墓を離れた。霊園の道を歩いていくと、暖かい光が体に染み込んでいく。ここは本当にパワースポット。元気出せよって、父が励ましてくれたのかもしれない。
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