天国にダイブする。

貧困の中、姉に支えられながら制作を続けていた田中一村は、画壇に認めらようと懸命だった。でも晩年、スケッチ旅行で訪れた奄美大島に惹かれ、51歳の時に単身で移り住んだ。その後の一村の作品は、何かから解き放たれたように色彩にあふれ、表現ものびやかで官能的だ。
奄美大島で一村が住んでいた借家は、森の中の木造の平家。この家を「御殿」と言って喜んだ。

歳を重ね体力が衰えると、単身で未知の土地に移り住むのは勇気のいることだ。家族や子孫に助けてもらいながら余生を過ごしたいと思う人が多い中で、一村にこのような決断をさせたのはなんだったのか。

いずれにせよ、世俗的な欲求から解き放たれた彼の晩年は、幸福だったのではないかと思う。体の衰えを感じながらも常に南国の自然と共にあり、69歳で急逝するまで、美の発見と創造に没頭した。まるで天国にダイブした仙人のようだ。

田中一村「熱帯魚三種」昭和48年(1973)


田中一村の借家(奄美大島)


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