- 2022年7月28日
人生で、本当に育むべき資産とは。
私はどんな晩年を過ごすのだろうか。どんな死を迎えるのか考えると、真っ先に田中一村が浮かぶ。中央画壇に認められず、晩年は世捨て人のように奄美大島に移り住み、69歳で亡くなるまで自然を描くことに没頭した日本画家だ。
日本の画家の話。
私はどんな晩年を過ごすのだろうか。どんな死を迎えるのか考えると、真っ先に田中一村が浮かぶ。中央画壇に認められず、晩年は世捨て人のように奄美大島に移り住み、69歳で亡くなるまで自然を描くことに没頭した日本画家だ。
500号から1500号の大画面が並んだ展示室に入ると、津波に襲われたような感覚になる。絵の中で、個人の物語が寄せ集まり、連なり、社会の物語が嵐のように巻き起こる。四方八方から様々な感情を浴びせられているようだ。
有賀さんが描いているのは「夢」の世界だ。私たちが眠りについた後に潜在意識が見せる風景。過去の記憶や普段気づかない感情、感覚、取り留めのない、儚いものが様々な形状になり、脳のスクリーンに現れては消えていく。有賀さんはそういった取り留めのないものを注意深く拾い、具象化する。
「僕は制作する上で質量を大切にしているんだよ」いつかの個展で野崎さんはそう私に話していた。キャンバスにモデリングペーストを塗り、注意深く絵具を塗り重ねて重厚感を作り上げていく画風には、野崎さんの自己対話の痕跡が表れていた。でも今回はそういった重厚感が見られない作品がいくつかあり、いつもの空間に、新鮮な切れ味を出していた。
グラフィックデザイナーとして駆け出しの頃、お香のパッケージデザインの仕事をしていた。日本古来から使われている日用品を、なんとかセンス良くデザインしようと参考にしていたのが、江戸琳派の芸術だった。