独りだけど、独りではない時間。

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何もしていないのに素晴らしい気持ちになる時は、ガイドスピリットが降りてきている時だという。若い時から、そんな瞬間をたくさん知っていた。

高校の3年間通った相模原市の通学路は空も道も広く、背の高い街路樹が様々な表情を見せた。梅雨の濡れた緑がしっとりと土の匂いで包み、夏の力強い緑が鮮やかな青空に映え、秋の豪華な黄金色が賑やかな気持ちにさせる。世界の鮮やかさを身体中で感じる時、この時を誰かと一緒に過ごしたいと切望したものだった。

教室はいつもざわついていて、進路指導に熱中する先生に反抗する友達が、授業をさぼって廊下で恋話をしていた。本を読む私にヤジを飛ばす。「あなたを知りたい」とよく言われたけれど、彼らにかける言葉が見つからず、先ほど見た鮮やかな世界を、そっと胸に隠した。

人は恋を知ると野蛮になる。自分の軸が外界にぶれて、日常は「勝つか、負けるか」「奪うか、奪われるか」に変わる。本当に知りたい心は遠のき、触れたいものには届かない。飢えて求めるばかりの人は、世界の美しさに触れることができないことを、なんとなく知っていた。

自宅は逗子海岸から歩いて5分。夏の夕暮れになるとサンオイルの混じったような潮の匂いがした。お洒落な若者たちで賑わった砂浜には破れたビニール袋や潰れた空き缶が散らかり、沈んでいく太陽が地平線を焦がしていく。海辺で焦されていく体は、独りなんだけど、独りではなかった。光に浄化され、世界に同化する爽快さを、教室の友達にどう説明したらいいのだろうと、考えたものだった。


About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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Tomomi Sato

日常や今社会で起きている出来事を、アートな視点で捉え、私たちがもっと自然体で、エキサイティングに生きられるような、ものの見方、心のあり方を探っていこうと思います。

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