寒い国なのだろうか。薄日の滲んだ、灰色の重たい空と、堅牢な建物にじわりと焼き付けられた夕陽の赤色。終わっていく一日が遺したぬくもり。長く繰り返されてきた日常の倦怠と希望を、愛おしく感じる時間。
2つの建物の間に伸びる道路は、微かに明るい曇り空の向こうまで続いていそうだ。子供の頃住んでいた公団住宅を思い出す。大きな建物の間に伸びる坂道の向こうに、まだ見ぬ明日がある事が希望であり救いだった。そんなふうにしてなかなか変える事ができない日常を過ごしていた。
この作品には「欧州の憂愁」という題名が付けられている。30年くらい前に旅したパリの街を思い出す。こんなふうな曇り空だったが、大通りにはお洒落な男女が行き交い、カフェでは寛ぐ人たちの笑い声が聞こえた。
どしりと構えた石造りの建物と深緑色のドア。長い間、人間によって営まれてきた感情的体験の痕跡が、街全体を取り巻いていた。私はその痕跡を深ぼってみる。きれいなものばかりではない。だからこそ愛おしい。いくつもの栄光と悲劇、欲望と祈りが、重なり合い積み上げられた現在は、未知のものでさえ受容する懐の深さがある。
有賀和郎 「欧州の憂愁」パステル 2010年頃
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