詩集の出版をして、言葉の威力を知った私は、もっと自分のことを伝えたいという気持ちに駆られ、HPでエッセイや、小説を書き始めた。好き勝手に書くことだけでは飽きたらなくなって、プロの小説家が教える小説学校へ通い始めた。
小説家は、何でもストレートに書き綴る私に対して親身であり威圧的だった。言葉は使い方次第で薬にも刃にもなるからだろう。意欲的に作品を持ち込んだが、彼らは私の文章から浅ましさや未熟さ、欲望を見抜いて、容赦なく指摘した。
これは私にとって衝撃だった。学生時代に描いていたあの、皆に気味悪がられた作品を思い出した。もう一度そこへ戻って、自分自身を見つめ直さなくてはならなかった。
でも、なかなかうまくいかなかった。私は20歳の頃の純粋な感覚を失っていた。
20歳の私は自分を受け入れてくれる場所を必死で探していた。同時に否定されることをひどく恐れていた。自身の心と体の結合のために神経を研ぎ澄ませ、人や社会の美醜を鋭く嗅ぎ取っていた。大学を出てからは、社会に適応するために自分を抑圧し、生きるための知識や経験を身につけることに必死だった。そして自分を傷つけるような刺激から身を守るようになっていた。
心を守るようになったら、人や世界とつながる瞬間の美と感動を体験することはできない。芸術に携わる者にとっては致命的だ。
私は「大人」であろうとして鎧をいくつも纏っていた。そして本当の感動から逃げていた。そんな私を、小説家たちは、嘲笑と失望の目で見ていた。
About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール
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教会で牧師さんと話していて、「ほとんどの人は欲でものを言い、動いていますね。愛って、あってないようなもの」と私が言ったら「大半の人は反射神経で喋っています。愛とか思いやりとか、深く考えない」という返答が返ってきた。
近頃周りでも、定年を迎えた夫婦の家庭問題や健康、金銭問題の話を聞く。生活レベルを落とした時に表出するいろいろな問題に誰もが諦観的なのは、老いて体が動けなくなってからでは打つ手がないからだろう。
朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は目に映るものがとても新鮮だったことを思い出した。
お宝鑑定団で初めて鴨居玲という画家を知った。ゴッホと同じ自画像作家として有名だが、幽霊のようなピエロのような自画像を見ていたら、目を背けていたものにまざまざ向き合わされたようだった。
大切なものは「その人」を語る。距離が近くて言いたいことを言い合い傷つけあった人たちにも、大事にしているもの、楽しみにしていることがあった。向き合った時の言葉や顔色だけでなく、周辺まで見ると、一個人が立体的に見えてくる。
【個展開催のお知らせ】佐藤智美展〜INSPIRATION 会期:2024年4月10日(水)〜14日(日) 会期中無休 時間:11:00~20:00 ※4/10(水) 13:00-20:00 4/14 (日)11:00-16:00 場所:Gallery Klyuch (カフェle bois 2F)