Categories: アート生活人生

「愉しみ」と「癒し」。

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子供の頃は集団で遊ぶより、一人の時間が大切だった。集団で遊ぶのは楽しい時もあったが時々起きるぶつかり合いは面倒だった。多分、私は大人たちから、静かなのに自我の強い厄介な子と思われていたと思う。そのせいで子供同士のトラブルでは、私の分が悪かった記憶がある。

小学校低学年の頃は福岡に住んでいて、学校から家までの距離は歩いて30分ほどだった。忘れ物が多かった私は、家までこの道のりを走って取りに帰らされた。家では呆れた母親が、学校では怒った先生が待ち構えていたが、通学路で出会う街路樹や田んぼの緑はいつも輝いていて、肌を撫でていく風はいつも優しかった。
小学校低学年の頃は、親友といつも一緒にいた。彼女の家には犬と鶏がいて、彼女は毎朝、鶏が産んだ卵を食べて学校に来ると言った。彼女の家の庭には犬小屋と鶏小屋、桜の木があり、少し生臭いような生き物の匂いが私は好きだった。初夏になると、彼女の家の桜の木からさくらんぼがとれ、私と彼女はそれを食べて楽しんだ。甘酸っぱい味と、雨水の混じった土の匂いは、今も忘れない。

友達との約束が取れない時は、一人で自転車に乗り、田んぼの畦道を走った。追い風より向かい風の方が心地よかった。青い空の下を駆け抜け、緑の稲を軽くなぎ倒していく風に向かっていくと、目元まであった前髪が払われおでこが全開になる。それが気持ちよかった。


佐藤智美 世界は眠っている〜sleeping world  2016


自然はどんな傷も癒せる偉大なヒーラーだ。人の言葉には、いつも誠意が宿るわけでははない。田中一村が、決して人物を描かなかった理由も、東山魁夷が自然に惚れ込んで生涯描き続けた意味もわかる気がする。山も、海も、動物も、時には荒れ狂い、人間を懲らしめるが、時には大いなるやさしさで、私たちを包み、癒してくれる。

大人になった今も、最高の愉しみといえば、パーティでみんなと騒ぐよりも、一人で山へいくことだ。緑を見ながら温泉に入って、地酒を愉しむ。「一人で行って寂しくないの?」と、いろんな人から言われるが、一人で行くから内観ができるし、自分の中のいろんなことに気づくことができる。これ以上に豊潤な時間はないと私は思っている。


About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

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