Categories: アート生活人生

自然の一部である「人間」。

スポンサーリンク

第71回現展出品作。前の記事にも書いたけれど、これは「思春期」をテーマにした連作。人の心に一歩踏み込んで深く表現できた記念すべき作品。でもこれが実際、国立新美術館に飾られた時は、とてつもなく恥ずかしかった。

審査員の先生に、「「愛」と「妬」はどちらが先ですか?」と聞かれ、「「妬」が先で、「愛」が後です」と答えた。私の中では「苦しみを知らなければ愛することができない」という考えがあったから。でも人によっては、この順序が逆な人もいるだろう。

人物を描いていても、一貫して自然を描きたかった。自然の一部である人間。その象徴として「愛」を描きたいと思っていたけれど、決してきれいな絵にはならなかった。私の人間観は、思春期から進化していないのかもしれない。例えば、子供は、優しく、思いやりがあり、感情的で残酷である、ということ。でも残酷さが美しく見えたりするのは、いまだに癒えていない傷があるからだ。
傷を持つ人間は切実で、ひたむきで、悲しい。そしていつまでも、孤独だ。なぜなら、よっぽど優しい人でない限り、誰も悲しみを分け与えられたいなんて思わないからだ。

そういえば学生の時に、愛をテーマにしたとても明るい絵を描いていたら、母がいきなり入ってきて、「こんなの愛じゃない!あんたは何も知らない子供だ!」と詰られたことがある。それほどまでに母は愛において苦しんでいて、それを理解できない私は幼いのか、と落ち込んでしまった。

でもこれは間違った思い込みだ。
誰だって、悲しみよりも、喜びや安らぎ、楽しみを分け与えられたい。傷つけ合いが現実だと思うのは、その人の悲しみが深いからだ。そして悲しみの殻に籠もっているうちは、誰にも真心を届けることはできないのだ。

佐藤智美 「愛」「妬」2015


TOMOMI SATO’S ART WORKS
【Official Site】https://www.ts-artworks.com/
【Art Shop】https://artworks2017.thebase.in/
【Facebook】https://www.facebook.com/t.sato.artworks/
【Instagram】https://www.instagram.com/tomomiart8425/
【Blog】https://tomomiart.tokyo
【E-mail】tommys1970@ab.auone-net.jp

スポンサーリンク
Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

Recent Posts

「陽キャラ」と「陰キャラ」。

教会で牧師さんと話していて、「ほとんどの人は欲でものを言い、動いていますね。愛って、あってないようなもの」と私が言ったら「大半の人は反射神経で喋っています。愛とか思いやりとか、深く考えない」という返答が返ってきた。

6 days ago

地に足をつけて、天を見上げる。

近頃周りでも、定年を迎えた夫婦の家庭問題や健康、金銭問題の話を聞く。生活レベルを落とした時に表出するいろいろな問題に誰もが諦観的なのは、老いて体が動けなくなってからでは打つ手がないからだろう。

1 week ago

変わっていくものと、変わらないもの。

朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は目に映るものがとても新鮮だったことを思い出した。

3 weeks ago

鴨居玲の自画像〜自分の闇を見つめる

お宝鑑定団で初めて鴨居玲という画家を知った。ゴッホと同じ自画像作家として有名だが、幽霊のようなピエロのような自画像を見ていたら、目を背けていたものにまざまざ向き合わされたようだった。

3 weeks ago

「人」を愛する。「間」を愛する。

大切なものは「その人」を語る。距離が近くて言いたいことを言い合い傷つけあった人たちにも、大事にしているもの、楽しみにしていることがあった。向き合った時の言葉や顔色だけでなく、周辺まで見ると、一個人が立体的に見えてくる。

4 weeks ago

佐藤智美展〜INSPIRATION

【個展開催のお知らせ】佐藤智美展〜INSPIRATION 会期:2024年4月10日(水)〜14日(日) 会期中無休 時間:11:00~20:00 ※4/10(水) 13:00-20:00 4/14 (日)11:00-16:00 場所:Gallery Klyuch (カフェle bois 2F)

4 weeks ago