Categories: 人生日常

人生で最も大切なもの。

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夫が23日に、退院した。
朝10時に私と娘が聖路加国際病院へ迎えに行き、夫は3週間の病院生活に別れを告げ、タクシーで帰途についた。

築地からホームタウンまでは四千円弱。事故当日、深夜で一人タクシーを拾って帰った時と同じ金額。爽やかな青空の下、黄色いイチョウの葉が鮮やかだった。私たちは会話が弾んだ。また和やかな時間を持てることが何よりも喜びだった。

「築地って、思い出の場所になりそう」
娘は夫の隣で、嬉しそうに言った。本当にそうだ。不安に脅かされたり、ほっとしたり、喜んだりしながら、この街を歩いたことを、私たちは今後も忘れないだろう。

夫が入院している間は、夫の状態を見守りながら、夫の会社や保険会社とやりとりし、父の病状と実家を気遣い、娘の入学願書の準備をし、デザインの仕事もしていた。一人でいろんな責任を負ってみると、普段の私は随分と夫に助けられていたんだなあと思う。
波乱の入院生活で体重が4キロ減った夫も、目尻にシワが増えたが、どこか突き抜けたような爽快な顔をしていた。

「これからは一日一日を、楽しく生きようと思ったんだよ。好きなことをやって、自分の才能を伸ばして。いつ死んでもいいように」
スーパーでお寿司を買い、家路を歩いている時に呟いた夫の言葉には静かな満足感が滲んでいて、私も満ち足りた気持ちになった。
「そう。私も周りの人を大事にして、一日一日を大切に生きようと思ったの」

川岸に映えるピンク色の空が、今日は特別に美しかった。神様からの貴重なプレゼントのようだ。
死の危機に直面して、失ってはいけないものに気づいた。人生で最も大切なもの。これからはそれを忘れることなく、生きていこう。


About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

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