一つのことをやり続ける生き方。

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高校時代の先輩の作品が日展で授賞し美術館に収蔵されていた。大学時代も私はよくその先輩と話していたが、何が違っていたかというと、先輩は美術以外のことをやらない人だったのを覚えている。卒業後も定職につかず画業に専念していた。そして、デザインやら音楽やら色々かじっている私をやや見下しているようだった。
大学受験でめちゃくちゃ頑張って大学に入ったときは、いつか私もあのような画壇に入れたらと漠然と思っていたけど、大学の教授の絵にあまり関心がなかったから、そっちの道に行かなかったのは当然の結果かもしれない。

一つのことを粘り強く続ける、という習慣は、自分が育ってきた家庭ではサバイバル力を養うために必須という雰囲気があった。何かを頑張って欲しいものを買ってもらったこともある。
親戚の集まりで聞いたが、「一つのことをやり続ける生き方」は祖父が推奨していたらしい。また読書家で、祖父の愛読書を父も読んでいたというから、父もその思想を受け継いだのかもしれない。私もそのような教育を受けたが、社会人になってから美術以外のことにも積極的に挑戦するようになったのは、人として豊かに生きるには美術しか知らないようではいけない、もっといろんな世界を見たいと思ったからだ。

一つのことをやり続ける理由は何か。何十年も探求をし続けてきた人は、それをしている時が一番楽だ、という。それはそれでいいけど、本心はその活動を通して新しい視点が欲しいからではないか。
私が一つのことに没頭していた時は、背後に扱いようもない飢餓感とか虚無感とか、そういった負の感情があった。とにかく克服するために新しい光を探し求めた。どれだけ長い旅になるか。一生たどり着かないかもしれない不安も抱えながら。

芸術品の価値をはかる番組を見て思うのだけど、骨董品に付けられる値段というのは、芸術家たちが辿った孤独な探究の日々を労うためのものではないかと思う。

芸術に憧れる人の特徴として、承認欲求が強いことが挙げられる。何かを表現して自分を認められたい。尊敬されたいという欲求が根底にあるようだ。しかし傑作を作ることと幸福になることは別だ。傑作を作るとは、ある意味、戦いに近い。やり続けることは並ならぬ集中力と飢餓感、孤独感が必要だ。しかしそれをやり続けたからといって必ずしも日の目を見るとは限らない。

絵を描かなくたって自分を承認することはできるし、芸術家でなくても精神性の高い人はいる。何で以って自分を高めていけるかなのだ。
齢50を過ぎた私も芸術以外のことができなくなりつつあるが、どんなに激しい探求の日々を送っても、幸せになれなければ生きている意味がない。だから私は今後も自分自身の成長や周りの幸せのために作品を作っていく。

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Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

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