Categories: 美術美術評論

「豊かさ」って何?

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制作のBGMに、Youtubeのタロット占いの番組をよく聞いているのだけど、占い師が「あなたには豊かさが訪れます」なんて言っているのをよく耳にする。
そもそも、豊かさって何だろうか。ふだん私たちは会話で「豊かさ」なんて言葉を使うだろうか。スピリチュアル用語は抽象的だ。「受け取りたくなければスルーしていいです、ピンときたら受け取ってください」なんて、本当に無責任だなあと思う。

私たちが満ちたりた時ってどんなときだろうか。長い人生のスパンで考えると、努力してきたことが実った時とか、願い事が叶ったときかな。そういう時は、花火のように華やかに満たされるが、長くは続かない。そもそも夢とか目標って、いくら頭の中で思い描いても、叶わなければ、幻想でしかなくなる。

心理学の授業で、「自分の空虚は自分でしか満たせない」と学んだ。しかし、多くの人は外的なことに期待していて、「自分を満たす」ってどういうことなのか知らない。だから、ある程度年齢が過ぎると「もう私には幸せなんかないわ」なんて言う人がいるのだ。

ポール・シニャックの「朝食」。柔らかな点描で描かれているのは、最もありふれた日常だ。ここに描かれている豊かさを、若い頃は感じることができなかった。夢や目標に向かっていると、どうしても「今、この瞬間」を蔑ろにしてしまう。それががどれだけ貴重なものだったかは、失った時、初めて気づく。

例えば、親しい人がいなくなってしまった時、慣れ親しんだ土地を離れなければならなくなった時、もっと話せば良かったとか、あれをやっておけば良かった、あの時、あの時間をもっと大切に味わえば良かったって思うことがある。でも当時は、それほど貴重なものだとは気づかなかった。私たちは、集団生活を送るために少なからず感性を麻痺させているからだ。

過ぎた時間が二度と戻らないと知った時、自分軸ではなく他人軸で生きるのことが、いかに人生の浪費であるかを思い知る。例えば友達とコーヒー一杯を飲むにしても、心を開け放っていなければ、その瞬間の豊かさを味わうこともできない。今向き合っている相手が、どういう過去を持っていて、どういう感情を向けているか、感じることができいなければ、相手と真の意味でつながることもできない。

「自分を満たす」ってどういうことなのか。「豊かさ」の意味はいろいろあるけど、一つ答えがあるとすれば「素顔でいること」だと思う。いろんな役割を捨てて、体の中心に自分の拠り所を作って、その場所で、自由に感じること。自分や周囲に起こったことを否定しないことで、目に見える風景が鮮やかになる。これも一つの「豊かさ」なのかなと思う。

ポール・シニャック 朝食(ダイニングルーム) 1886-1887


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Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

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