窓を開けて夜空を見た。闇夜に浮かぶ、見事に丸い満月は、ほんのりと黄味を帯びていて美味しそうだ。
「ママ、カメラを貸して。撮ってくるから」といって、嬉しそうに外へ出ていく娘を見ていると、何年か前、夫と娘とともに階段の踊り場に出て満月を撮影したことを思い出した。今年は夫も私も新事業でパソコンの前からなかなか動かないので、代わりに娘がやっている。
月には表情がある。青白い球面にクレーター(模様)がはっきり見えると、月の機嫌が良いように見える。雲のない夜空に、月は最も美しく光る。
月は太陽と違って、天の状態で見え方が変わる。霧の夜空には朧月、曇りの夜空には雲隠れの月、太陽の陰になる三日月、半月、最も美しい満月は、何もない澄んだ闇夜に浮かぶ。月は単体にして、その美が認められる。
周囲や社会状況によって移ろう人の心を思った。天と月が互いに影響し合うように、社会と人も影響し合う。日常は雑音と雑念のトラッシュボックスで、時代の流れとともに、すごい速さで更新されていく。
人間はどうしようもなく社会的な生き物だけど、日常の合間に孤独はちゃんと用意されている。空虚を超えて「無」になると、外を走り去る車の音や、しんしんと降る雨音が、音楽のように体に入ってくる。孤独な闇の満月のように、「今、此処」にいることに満ち足りていく。
About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール
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教会で牧師さんと話していて、「ほとんどの人は欲でものを言い、動いていますね。愛って、あってないようなもの」と私が言ったら「大半の人は反射神経で喋っています。愛とか思いやりとか、深く考えない」という返答が返ってきた。
近頃周りでも、定年を迎えた夫婦の家庭問題や健康、金銭問題の話を聞く。生活レベルを落とした時に表出するいろいろな問題に誰もが諦観的なのは、老いて体が動けなくなってからでは打つ手がないからだろう。
朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は目に映るものがとても新鮮だったことを思い出した。
お宝鑑定団で初めて鴨居玲という画家を知った。ゴッホと同じ自画像作家として有名だが、幽霊のようなピエロのような自画像を見ていたら、目を背けていたものにまざまざ向き合わされたようだった。
大切なものは「その人」を語る。距離が近くて言いたいことを言い合い傷つけあった人たちにも、大事にしているもの、楽しみにしていることがあった。向き合った時の言葉や顔色だけでなく、周辺まで見ると、一個人が立体的に見えてくる。
【個展開催のお知らせ】佐藤智美展〜INSPIRATION 会期:2024年4月10日(水)〜14日(日) 会期中無休 時間:11:00~20:00 ※4/10(水) 13:00-20:00 4/14 (日)11:00-16:00 場所:Gallery Klyuch (カフェle bois 2F)