ダークシーを越え、アートハランを訪れる。

スポンサーリンク

2019年公開のディズニー映画「アナと雪の女王2」を見た。
初回の「アナと雪の女王」は、主題歌「let it go」がヒットし、不思議な能力を持ったエルサの自己解放がテーマとなった物語だ。次作の予告編では、荒れ狂う海に向かっていくエルサが印象的だったので、前から見たいと思っていた。

アレンデール王国に奇妙な現象が起こり、不思議な声を聞いたエルサが、国を救い、自分の持つ力の秘密を解き明かすため、妹のアナ、クリストフ、オラフ、スヴェンとともに旅に出る。魔法の森で、奇妙な現象を鎮める第5の精霊の存在を聞かされたエルサはアナとオラフを氷のボートで引き返させ、一人ダークシーを越える。

水の精の援助を得て北のアートハランに到着したエルサは、魔法の森で自身のルーツに出会い安心感を得るが、そこで先祖が犯した罪を知り、体が凍り付いてしまう。
エルサの危機を察知したアナは、森にとって正しいことを行い、アレンデール王国に平和を取り戻した。アナは女王に即位し、エルサは魔法の森の第5の精霊として生きることを選択した。

「アナ雪2」を面白いと思ったのは、「ダークシー」と「アートハラン」が壮大なスケールで描かれていることだ。ダークシー=dark sea。暗い海を連想することから、潜在意識のことだろう。アートハランは映画の中では「過去のこと、この世のすべてを知っていると言われている記憶の川」と言われ、人間が足を踏み入れることは困難な場所らしい。
危険な場所に踏み入って真実を知ろうとするエルサの勇敢さと、エルサを愛するアナの清々しさには心を打たれる。



私たちの潜在意識には、善悪、清濁が混在していて、平穏な日常を送るために都合の悪いことが表出しないよう蓋をしている。底にあるものは少なからず現在の自分に影響を及ぼしているので、問題を解き明かすためには、それらと向き合わなくてはならない。

アートハランの捉え方の一つとして、墓所、拠り所、つまり自身のルーツがある。
私たちはこの世界で全く孤独に存在しているのではない。物質的な恩恵だけでなく、過去の絆、先祖たちが積み重ねてきた業の上に存在し、彼らの愛を感じることで、安心感を得ることができる。あまりにも日常的な感覚なので、普段は意識しないかもしれないが、安心感は自身を取り巻く世界にも通じ、ルーツも含めて自分自身であることに気づく。

もし私たちのルーツで、愛のない行いがなされたことを知ったら、私たちはとても傷つくし、拠り所にも幻滅してしまう。未来を生きるためには、過去の罪を精算しなくてはならない。



では私たちが、実際にダークシーを越え、アートハランを訪れる時とは、どんな時だろうか。
例えば、突然のトラブルや病気だ。予期しない災難に見舞われ、普段の均衡を失なった時、私たちの信じていた安心の場所は本当に安心なのか、見直す機会がやってくる。
絶対的な安心の場所とは、「私たちがそう信じたい」だけの場所ではないだろうか。

この世界では多くの要因が絡んでおり、生物の本能的な観点から見れば、綺麗事では済まされないことも繰り返されてきた。綺麗事でないことを知ることは、私たちの一番柔らかいところ、イノセントな部分を傷つける。
絶対的な安心が壊された時、墓所で育ててきたイノセントを守るか捨てるかの選択に迫られる。イノセントを守るとは、誠を貫くことだ。

先祖の罪を知ったアナは、悲しみと孤独感に苛まれるが、「森にとって正しいこと」をするとで森への誠意を表し、国の平和を取り戻した。

それぞれの使命を知り、別の人生を歩むエルサとアナは、物語の冒頭に見た人懐こさが消えていた。彼女たちを守ってきた拠り所は壊され、それぞれの中に再生されたのだ。
未練を残さず、今を颯爽と生きる姉妹は凛として美しい。成長して巣立っていく雛鳥を見送るような寂しさと達成感を残して、物語は完了した。


言葉とアートで人生をブレイクスルーするフリーランス画家 佐藤智美」メルマガ登録はこちら

【TOMOMI SATOS ART WORKS】https://www.ts-artworks.com
【TOMOMI SATOS ART】https://artworks2017.thebase.in
【TOMOMI SATOS ART BLOG】https://tomomiart.tokyo



スポンサーリンク
Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

Recent Posts

呼吸が止まる時。

空を仰いでいる若者は、勢い余って崖から落ちそうだが、彼の顔には不安も恐怖もなく、好奇心でいっぱいだ。崖から落下するか飛ぶか、可能性は未知数だ。

23 hours ago

「陽キャラ」と「陰キャラ」。

教会で牧師さんと話していて、「ほとんどの人は欲でものを言い、動いていますね。愛って、あってないようなもの」と私が言ったら「大半の人は反射神経で喋っています。愛とか思いやりとか、深く考えない」という返答が返ってきた。

2 weeks ago

地に足をつけて、天を見上げる。

近頃周りでも、定年を迎えた夫婦の家庭問題や健康、金銭問題の話を聞く。生活レベルを落とした時に表出するいろいろな問題に誰もが諦観的なのは、老いて体が動けなくなってからでは打つ手がないからだろう。

2 weeks ago

変わっていくものと、変わらないもの。

朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は目に映るものがとても新鮮だったことを思い出した。

4 weeks ago

鴨居玲の自画像〜自分の闇を見つめる

お宝鑑定団で初めて鴨居玲という画家を知った。ゴッホと同じ自画像作家として有名だが、幽霊のようなピエロのような自画像を見ていたら、目を背けていたものにまざまざ向き合わされたようだった。

4 weeks ago

「人」を愛する。「間」を愛する。

大切なものは「その人」を語る。距離が近くて言いたいことを言い合い傷つけあった人たちにも、大事にしているもの、楽しみにしていることがあった。向き合った時の言葉や顔色だけでなく、周辺まで見ると、一個人が立体的に見えてくる。

1 month ago