• 日本の画家,  美術,  美術評論

    女性が内に秘めるもの。

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    テーブルに転がるブドウの実。大きな葉の陰で女性は項垂れる。胸を隠す扇子と背景の豪華な花模様が、満ち足りた日常を物語る。しかし眼差しは物憂げで、誰かを魅惑しているようにも見える。
    いつか読んだギリシャ神話の女神たちを思い出した。大地から生命を産み出したり、逆に土へ還したりするが、恐ろしい怪物や悪神の前で悲しいほど無力だ。どんなに天の恩恵を受けて美しく満ち足りていようとも、未だ届くことのない光への憧れを消すことができない。

    八木原由美さんの描く女性は、単身の時もあれば、二人の時もある。礼服を着た厳かな女性と、妖艶で華やかな女性。または、黒衣の魔女のような女性と白衣の天使のような女性…。この女性たちは二人で一つだ。相反する夢や欲望を秘めながら、それらが完全に満たされることがないことを悟っている。


    八木原由美 「月の雫」F50 油彩 2002年


    女性が女性として自立するとは、不完全を受け入れることだと思う。そして男性もまた同様の寂しさを持っている。幸福になる、ということは、不完全であることを愛おしみ楽しむことだ。男と女が結ばれて完全になる、というのは、男女平等が謳われた現在でも、決して時代錯誤なことではない。

    八木原由美 「葡萄」F10 油彩 2018年



    TOMOMI SATO
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  • 人生,  社会

    「女は家庭を守るべき」?

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    夕食時に家族と一緒にクイズ番組を見ていた。挑戦者の回答が正解すると獲得金額が上がっていき、全問正解すると300万円を持ち帰ることができる。現在子育て中の元アイドルが出ていて、子育て用品を買うために報酬を持ち帰りたいと言った。
    いくつか回答に成功し、50万円獲得したところで、司会者が「このままクイズに正解し続ければ、持ち帰り金額は上がりますが、回答が不正解だったら、全額失います」と、彼女に進退の決断を委ねた。
    「挑戦しないと周りからなんか言われるかもしれませんが、私は賞金を持ち帰りたいので、ここでやめます」
    番組は「母は強し!」と、派手にハッピーな演出をして、彼女のクイズを終了した。

    なんとなく不快だった。周りがなんかいうかは別として私だったら挑戦する。しかしそれよりも、挑戦しない母親を奨励するテレビの演出に苛立った。
    次の日、心理学学校で私はこのことをみんなに話した。すると、他の受講生が「この人が挑戦すれば挑戦したで番組は祝福すると思います」と言った。胸の中で窮屈に膨らんでいたものに、突然、スッと抜け穴ができた感じだった。

    「女は家庭を守るべき」「母は子供の世話をするべき」
    昔から日本の社会に根付いているこのスローガンは、女性の幸せを制限するだけでなく、男性の女性依存も助長している。しばしば女性起業家が「ママ起業家」「○児の母」という言葉をプロフィールに載せて女性の共感を集め、ビジネスにつなげようとするのを見ると、日本女性がいまだに社会的圧力から自由になれていないことを感じてしまう。
    家に居座って「夫が…子供が…」と愚痴るのだったら、みんなが自由になるべきだ。〇〇の母、〇〇の妻という立場から解き放たれ、自分の感じ方や生き方に自信を持つべきだと、切実に思ってきた。

    だけど「挑戦した人も祝福される」と、さらりと言われた時、突っ張っていた肩の力がスッと抜けた気がした。

    私はなぜ反発していたのだろうか。
    突き詰めて考えていくと、また心臓が膨らんで胸を圧迫する。
    動悸の原因は多分、これだ。

    竹久夢二「APL・FOOL」 大正15年(1926)


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  • アート生活,  人生

    自然の一部である「人間」。

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    第71回現展出品作。前の記事にも書いたけれど、これは「思春期」をテーマにした連作。人の心に一歩踏み込んで深く表現できた記念すべき作品。でもこれが実際、国立新美術館に飾られた時は、とてつもなく恥ずかしかった。

    審査員の先生に、「「愛」と「妬」はどちらが先ですか?」と聞かれ、「「妬」が先で、「愛」が後です」と答えた。私の中では「苦しみを知らなければ愛することができない」という考えがあったから。でも人によっては、この順序が逆な人もいるだろう。

    人物を描いていても、一貫して自然を描きたかった。自然の一部である人間。その象徴として「愛」を描きたいと思っていたけれど、決してきれいな絵にはならなかった。私の人間観は、思春期から進化していないのかもしれない。例えば、子供は、優しく、思いやりがあり、感情的で残酷である、ということ。でも残酷さが美しく見えたりするのは、いまだに癒えていない傷があるからだ。
    傷を持つ人間は切実で、ひたむきで、悲しい。そしていつまでも、孤独だ。なぜなら、よっぽど優しい人でない限り、誰も悲しみを分け与えられたいなんて思わないからだ。

    そういえば学生の時に、愛をテーマにしたとても明るい絵を描いていたら、母がいきなり入ってきて、「こんなの愛じゃない!あんたは何も知らない子供だ!」と詰られたことがある。それほどまでに母は愛において苦しんでいて、それを理解できない私は幼いのか、と落ち込んでしまった。

    でもこれは間違った思い込みだ。
    誰だって、悲しみよりも、喜びや安らぎ、楽しみを分け与えられたい。傷つけ合いが現実だと思うのは、その人の悲しみが深いからだ。そして悲しみの殻に籠もっているうちは、誰にも真心を届けることはできないのだ。

    佐藤智美 「愛」「妬」2015


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