藤島先生の家には子供はいかなかった。私が行くと奥様が、いつも高級なビスケットやクッキーをくれた。これだけすごい絵を見せてもらって、その上お菓子までもらって、とても恐縮な気持ちだった。この絵の原画は見たことがないけど、先生が12年にわたって描き続けた雑誌の表紙絵だ。当時私にくださった作品集からアップさせてもらった。
少女は目を閉じてアコーディオンを奏でている。背景は闇のような濃い青。幸せな夢を見ているのだろうか。
少ない線で的確に形を捉え、感情まで表現するデッサン力は卓越している。
藤島 奨 「リスボンの少女」
当時デッサンをやりたいと先生に申し出たことがあったが、断られた。理由は、あまり小さい頃からデッサンをやると、作品が小さくまとまってしまう(絵に面白みがなくなる)ので、今は自由に好きなように描いて欲しい、というのが、先生の願いだった。
先生の言った意味は、今はわかる。デッサンは観察力を養うのに必要だけれど、あまり早くから基本の技術を身につけてしまうと、基本を壊してオリジナリティを作り上げるときに、障害になるからだ。
結局私が本格的にデッサンを学んだのは高校2年生からだった。
今の日本の美術教育では、美術系の高校へ進学するため中学からデッサンを学ぶ人が多い。大学に行く頃にはかなりの技術力がつくようだが、日本の美術大学では、芸術のオリジナリティや、それを実際に社会へ生かしていく術は教えていない。学生は在学中か、社会に出てから自分で探して行かなくてはならない。
結局生きていくために必要な力は、どこへ行っても同じなのだ。
藤島 奨 「子供」
About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール
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教会で牧師さんと話していて、「ほとんどの人は欲でものを言い、動いていますね。愛って、あってないようなもの」と私が言ったら「大半の人は反射神経で喋っています。愛とか思いやりとか、深く考えない」という返答が返ってきた。
近頃周りでも、定年を迎えた夫婦の家庭問題や健康、金銭問題の話を聞く。生活レベルを落とした時に表出するいろいろな問題に誰もが諦観的なのは、老いて体が動けなくなってからでは打つ手がないからだろう。
朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は目に映るものがとても新鮮だったことを思い出した。
お宝鑑定団で初めて鴨居玲という画家を知った。ゴッホと同じ自画像作家として有名だが、幽霊のようなピエロのような自画像を見ていたら、目を背けていたものにまざまざ向き合わされたようだった。
大切なものは「その人」を語る。距離が近くて言いたいことを言い合い傷つけあった人たちにも、大事にしているもの、楽しみにしていることがあった。向き合った時の言葉や顔色だけでなく、周辺まで見ると、一個人が立体的に見えてくる。
【個展開催のお知らせ】佐藤智美展〜INSPIRATION 会期:2024年4月10日(水)〜14日(日) 会期中無休 時間:11:00~20:00 ※4/10(水) 13:00-20:00 4/14 (日)11:00-16:00 場所:Gallery Klyuch (カフェle bois 2F)