• 日本の画家,  美術,  美術評論

    人間の苦悩と、聖なる救済。

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    2007年、東京国立近代美術館でこの絵を見た。大きな屏風絵だった。中央の黒い群集は、首を垂れてさまよう亡霊のようだった。彼らは神々しい光に包まれている。決して絶望の中にいるのではなく、どこかに必ずある真理の道へ探り歩いているようにも見えた。

    「求法高僧東帰図」は、平山郁夫の初期の作品だ。遠い昔、中国の僧侶が仏教の教養を探究するため、国禁を犯し危険を顧みずに仏典を求めてインドへ旅した。彼らの険しい旅の足取りを絵画化することを試みたのは、平山自身が画家として果てしない道を歩んでいくために自身に課した闘いでもあったという。

    私はこの荘厳な幻想美が好きだ。漆黒と黄金。これは「人間の苦悩」と「聖なる救済」のように思える。項垂れ迷い歩く人たちも神に見守られた存在なのである。人間であるが故の苦悩、煩悩にどんなに苦しめられようとも、そこには必ず光が降り注いでいる。穏やかな眼差しで人間を見つめる平山が捉えた「迷いの中にいるものは必ず救われる」という真理が、ここに込められているように思う。

    平山郁夫 「求法高僧東帰図」1965年



    TOMOMI SATO
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  • 日本の画家,  美術,  美術評論

    欧州の憂愁

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    寒い国なのだろうか。薄日の滲んだ、灰色の重たい空と、堅牢な建物にじわりと焼き付けられた夕陽の赤色。終わっていく一日が遺したぬくもり。長く繰り返されてきた日常の倦怠と希望を、愛おしく感じる時間。

    2つの建物の間に伸びる道路は、微かに明るい曇り空の向こうまで続いていそうだ。子供の頃住んでいた公団住宅を思い出す。大きな建物の間に伸びる坂道の向こうに、まだ見ぬ明日がある事が希望であり救いだった。そんなふうにしてなかなか変える事ができない日常を過ごしていた。

    この作品には「欧州の憂愁」という題名が付けられている。30年くらい前に旅したパリの街を思い出す。こんなふうな曇り空だったが、大通りにはお洒落な男女が行き交い、カフェでは寛ぐ人たちの笑い声が聞こえた。

    どしりと構えた石造りの建物と深緑色のドア。長い間、人間によって営まれてきた感情的体験の痕跡が、街全体を取り巻いていた。私はその痕跡を深ぼってみる。きれいなものばかりではない。だからこそ愛おしい。いくつもの栄光と悲劇、欲望と祈りが、重なり合い積み上げられた現在は、未知のものでさえ受容する懐の深さがある。


    有賀和郎 「欧州の憂愁」パステル 2010年頃

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  • アートビジネス,  美術

    好きなことは仕事にしない方がいい?

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    緊急事態宣言がなかなか解除されない。皆家に引きこもっているので、Youtubeの視聴者が増える。コロナ不安を抱えた暇な人が多いので、Youtuberの意見に左右されるよなあ。

    日本は先行き不透明だ。いろんな事が崩れて再構築される過程にある。私の目の前に選択肢がいくつかあって、的を絞りたいんだけど、まだその時は来ていないようだ。Youtubeの画面を開くと、いつも、ひろゆきさんがいる。

    「僕は映画が好きなんだけど、映画監督にはなれない。僕はハッピーエンドでない映画の方が好きなんだけど、ハッピーエンドにしないと売れないから、でも、自分のやりたいことを曲げてまで映画を作りたいとは思わないから、映画監督で食べていくのは無理かなと。(中略)好きなことを仕事にすると好きでなくなるから、あんまり好きでないことを仕事にした方がいい」

    それはわかる気がした。例えばアートにしても、「こういうふうにしたら売れるんじゃないかな」という正解は私にもあるんだけど、それをやっちゃうと魂が体の中心からずれていってしまうような。
    多分、売れ筋路線に乗っている人は、その路線に乗れるように自分を変えていってるのかなと思う。

    いろんな人のアートを見ているけど、売れていないからそのアートがよくないかというと、全然そんなことなくて、「この人こんなに才能があるのに、どうしてこんなところにいるんだろう」と思う人も結構いる。そういう人は、「有名になりたくない」とか、「面倒くさい」とか、「周りから干渉されたくない」とかいう理由で、あえて世界を広げないのかもしれない。
    売れている人と売れていない人の差というのは、多分、周囲に自分を開くか否か、なんだろうなあ。

    イタリアで販売する絵を印刷するために、久しぶりに版画工房に連絡したら、「本当にお久しぶりです!お会いできるのを楽しみにしてます!」とめちゃくちゃ喜ばれた。そういえば、コロナとか、娘の受験とか、金欠とか、色々重なって制作から遠ざかっていたけど、やっぱり私の活力源は絵を描くことなんだよなあ。絵を描かないとね。

    TOMOMI SATO
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