Categories: 人生日常

人を助けるのは「義務」ではなく「人徳」である。

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昨日は朝から眼精疲労が酷かった。仕事をしていたら、だんだん頭痛がひどくなりパソコンに向かっていられなくなった。胃も痛くなってきて、とりあえず鎮痛剤を飲んだ。

夫に痛みを訴えたら「病院へ行け」と言われた。仕事でトラブルがあったようで夫は昨日から対応に追われている。「どうしてそうなったの?」と聞いたら「聞かないで」と言われた。相当ヤバいらしい。娘はまだ学校から帰ってこない。
夕飯は少なめにとり、私はいつもより早めに風呂に入って布団に寝転んだ。夫はヘッドフォンで耳を塞ぎ、険しい顔でパソコンを睨んでいた。

分厚い孤独感に襲われた。病院で寝たきりの父のことを思った。こんな孤独と戦っているのかしら。
昨年、父にそういう思いをさせるのが嫌だった母と弟が、懸命に在宅介護に励んでいた気持ちがわかるような気がした。
鎮痛剤が効いてきて、仕事中の夫の傍で横たわっていることに息苦しくなった私は、自分の仕事部屋へ行った。思いつくままSNSで呟くと、良い言葉が出てきた。

皆、自分のことで精一杯

どうして私は、苦しいときに助けを求められないんだろう。罪悪感を持つんだろう….心のルートを辿っていくと、昔、「自分を犠牲にしてでも、人を助けなさい」と教えた大人の顔が浮かんだ。「人を助ける」ことで、自分の臓器の半分を持っていかれるような威圧感が蘇ってくる。

「あなたを助けます」そんな看板をかけて近寄ってくる人を見ると緊張する。あなたは私の何を知っていて、何ができるの?「助けます」という看板の裏側には、大抵は「あなたも私を助けてね」という打算が隠れている。

人を助けるのは、義務ではない。人徳だ。
辛い経験をしてきた人が、同じような痛みを持った人に共感するからこそ「助ける」ことができる。誰彼構わず助けることはできない。

「親を助けなさい」「家族を助けなさい」「友人を助けなさい」

日本には「助ける」が社会的に義務付けられ、こんな格言が巷に多くあるけども、本当に共感しあって生きてきた者同士でないと、助けるなんて簡単にできない。
誰もが人生の旅人で、自分のことに精一杯で、余裕がないからだ。

長い会話より、気の利いた一言

私たちは皆、交差点にいて、常に誰かと出会っては別れている。一瞬だけ目があって、言葉を交わして、それが心に響くって、とても幸運なことではないか。なぜなら、その言葉が私の新しい道を拓くかもしれないから。

長々と話すと、無駄なことまで言ってしまい後悔する。言霊の作用は恐ろしいもので、ネガティブな言葉はそういう現実を連れてくる。私はますます口を閉ざす。どんなに愛する人といても私は孤独だ。でもそうやって、腹にたまったネガティブは頑固に固まっていく。

若き日の父と母は喧嘩が多く、母はよく私に父のことを愚痴っていた。それを聞いていると私まで汚れていくようで、本当に迷惑だったが、お互いにぶつかりあえるほど二人は愛し合っていたのだな、というふうにも思えてきた。


今感じている寂しさ、やりきれなさと心細さを、隅から隅まで写しとって、心の芯まで染み込ませる。忘れないように。
どこかで、今の私と同じような人を見かけたとき、瞬時にその人の心のど真ん中にスポンとハマるような、気の利いた言葉を投げかけれたらいいな、と思う。



夜の10時過ぎに娘が帰ってきた。固まっていたネガティブがぱっと溶けて、私は買っておいたゼリーをテーブルに出した。娘は学校で友達と遊んだこと、授業で描いた絵と学んだことを嬉しそうに話した。私もそれを楽しんで、さっきまでの心配事を話したら、気持ちが和んだ。

談笑していると、部屋にこもっていた夫が出てきた。険しい表情が緩んでいた。私のネガティブが嫌だったのかもしれないし、仕事がひと段落したのかもしれない。何もなかったかのように、私もゼリーを食べた。

About TOMOMI SATO〜人生開拓アーティスト佐藤智美 プロフィール

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Tomomi Sato

東京在住のアーティスト。理解しがたいものを理解し受け入れるために書いています。自由でスピリチュアルな風の時代に、私の気づきがお役に立てればと思います。

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