朝起きると、和室の茶色い柱と漆喰の壁が目に入る。ちょうど私が結婚した27年前も同じものを見ていた。いつも彼と一緒にいた。そうすることでやっと生きていた自分は、目に映るものがとても新鮮だった。
朝起きると若かりし自分が戻ってくるのよね。若い感性で懸命に生きようとしてた私が。そして今日何をしたいかがわかる。オンもオフも自分のペースを崩さない夫の頑固さは今も変わらないけど、世の中に迎合して人間関係も仕事もうまくやれてしまうような人とは、今も昔も縁がないのよね。
インターネットがあると友達もお仕事も楽しみもすぐにあるような気がしてしまう。だけど要らぬ心配もネットから入ってくる。結婚当初も今も生きる不安はあるけど、昔の方が現実にあるものを大事にして生きようとしていた。
人生の半分をとうにすぎたのだ。何もかも減っていく歳になったのだ。何かしないとと焦る自分と、腹を据えて今も精一杯生きようとする自分が入れ代わり訪れる。
6年前の自分の写真を見たら、太っていて頬が丸かった。あの時は豊かだったな。不満も多かったけど。不満が言えるということは豊かな証拠だ。
夫が「寝る時間を早くしよう」という。私もまた夫との時間をたくさん持ちたい。先は長くないからね。私の目標は、夜更かし、睡眠薬を止めることと、SNSを減らすこと。昔の健康で穏やかな生活を取り戻したい。
生きようとする意味を、若い時はこれほど深く感じなかったな。
年齢を重ねても、感性は成長していくよ。絵を描く時、文章書く時いつも感じる。私が感じることは常に新しくなっている。芸術は生きる力だ。私のための作品がいつか誰かの力になる。
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