小学校2〜3年の頃、学校から帰ってランドセルを置くと、友達と遊ぶために外へ出た。玄関を出て砂利道を少しいくとアスファルトの道路に出る。右に曲がると、石造りの垣根の向こうにはたくさん実をつけた柿の木が立っていた。
少し冷たくなった風がシャツの裾を揺らした。肌寒さに両腕を抱きしめながら、青空に素晴らしく映える柿の赤を見つめた。
華奢な木の枝に幾つもぶら下がった柿は、どこまでも高く澄み渡る空に向かって燃えている魂のようだった。
友達が来て私の名を呼んだ。彼女は私の顔を覗き込んで、「柿の木に何かおるの?」と聞いた。ううん、と首を振って、私は友達と一緒に、柿の木を離れた。
金木犀の甘い香りのなか、いつもの通学路を抜けて田園地帯に出ると、黄色い稲穂が柔らかく揺れていた。
田園地帯を抜けると、街路樹の道に出る。脇に用水路があり、私は両手でバランスをとりながら細い縁を歩いた。できるだけ早く渡り切るのが好きだった。頭上から落ちる木漏れ日が暖かく優しい。でも、冬が近づくと、この光はだんだん力をなくしていくのだ。
用水路は浅い川につながり、私はアスファルトの道路に降りた。路面から川面までは2mくらい。まだ入学して間もない頃、下校途中に、この川に校帽を落としてしまったことがある。自分で川面まで降りて校帽を取ったが、登って来れなくて、困っていた。ちょうど学生服を着たお兄さん達が通りかかり、その中の一人が、私に手を差し伸べてくれた。おかげで私は、無事、道に這い上がってこれた。
家から学校までの30分の道のりは、怖くて楽しい冒険だった。ハプニングの後に大きな優しさに出会う。そんなことを毎日繰り返していたから、充実していた。
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