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自然の一部である「人間」。

第71回現展出品作。前の記事にも書いたけれど、これは「思春期」をテーマにした連作。人の心に一歩踏み込んで深く表現できた記念すべき作品。でもこれが実際、国立新美術館に飾られた時は、とてつもなく恥ずかしかった。

審査員の先生に、「「愛」と「妬」はどちらが先ですか?」と聞かれ、「「妬」が先で、「愛」が後です」と答えた。私の中では「苦しみを知らなければ愛することができない」という考えがあったから。でも人によっては、この順序が逆な人もいるだろう。

人物を描いていても、一貫して自然を描きたかった。自然の一部である人間。その象徴として「愛」を描きたいと思っていたけれど、決してきれいな絵にはならなかった。私の人間観は、思春期から進化していないのかもしれない。例えば、子供は、優しく、思いやりがあり、感情的で残酷である、ということ。でも残酷さが美しく見えたりするのは、いまだに癒えていない傷があるからだ。
傷を持つ人間は切実で、ひたむきで、悲しい。そしていつまでも、孤独だ。なぜなら、よっぽど優しい人でない限り、誰も悲しみを分け与えられたいなんて思わないからだ。

そういえば学生の時に、愛をテーマにしたとても明るい絵を描いていたら、母がいきなり入ってきて、「こんなの愛じゃない!あんたは何も知らない子供だ!」と詰られたことがある。それほどまでに母は愛において苦しんでいて、それを理解できない私は幼いのか、と落ち込んでしまった。

でもこれは間違った思い込みだ。
誰だって、悲しみよりも、喜びや安らぎ、楽しみを分け与えられたい。傷つけ合いが現実だと思うのは、その人の悲しみが深いからだ。そして悲しみの殻に籠もっているうちは、誰にも真心を届けることはできないのだ。

佐藤智美 「愛」「妬」2015


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